第1話 ホストクラブ「スフィア」へようこそ!


 みなさん、ホストクラブ「スフィア」へようこそ。
 いきなり何の話かわからない?
 それは失礼致しました。
 これから皆様にお話するのは場末の小さなホストクラブのお話でございます。
 あ、申し遅れました。
 ワタクシ、ホストクラブ「スフィア」マネージャーの安藤でございます。
 それでは早速皆様を店内へとご案内させていただきます。
 お足元にお気をつけください。
 さぁ、心の準備はよろしいですか?
 ホストクラブ「スフィア」開店です!



「今日も誠心誠意、心を込めてお客様をおもてなししてください、よろしくお願いします」
 ホストクラブ「スフィア」女性オーナーの唯我、弱冠27歳にして経営者として「スフィア」を切り盛りしている。
 なぜかオーナーなのに源氏名がある。
「よろしくお願いしま〜す」
 全員の声が綺麗に揃う、「スフィア」を支えるホスト達の息はピッタリだ。
「健一、今日も頑張ろうな!」
 声のデカい…いや、身体もデカい全くホストらしくない風貌の勘九郎。
 そんな彼がなぜホストをしているのかは不明、ちなみに31歳。
「指名取れるように頑張ろうよ」
 抑揚の無い声で答えたのは健一、27歳。
 小さな店でありながら彼らはほとんど指名の付かない、いわゆるダメホスト。
「おまえらに付く客なんているものか?無駄話してないでグラスでも洗ってろ」
 そんな彼らに冷たく言い放ったのはNO.2のtetsu。
 30歳という年齢だが外見はもっと若く見える。
 甘いルックスとは対照的な冷たさがお客に受けているようだ。
「まぁまぁ、喧嘩しても仕方ないからさ。あ、tetsu、オーナーが呼んでるぞ」
 上手くその場を収めたのが当店最年長のSHURA、長年務めているだけあって揉め事の仲裁は得意なようだ。
 年齢は本人の前では禁句の35歳。
「ところでSYUさんは…?」
 そんな小競り合いには我関せずといった感じのマイペース癒し系ホストが健二。
 ホストクラブ「スフィア」最年少の25歳、しかし髪の毛は微妙…
「またせたな」
 声の主は今日も同伴出勤の当店NO.1、SYU。
 今時の若者…といった感じのルックスと恥ずかしげもなく出てくる歯の浮くような甘い言葉が「スフィア」に来店する女性達を虜にしている。
 そんな彼は一度ホストを引退したという過去を持つ。
 年齢は29歳。
「さ、みんな、お客様がお席でお待ちよ。スタンバイ出来てる?始めるわよ」
 唯我オーナーの声にホスト達の顔つきが変わる。
 普通の男性からホストの顔へと変わるのだ。
 フロアに音楽が鳴り響く。
 ワタクシの呼び込みとともにホスト達が1人ずつフロアへ登場。
 お客様の前で最高のポーズを決める。
 最後に呼び込まれたNO.1のSYUがマイクを握る。
「やぁ、今日もたくさんのかわいこちゃん達が集まっているね、嬉しいよ。さぁ、みんな、まずは乾杯といこうじゃないか。飲み物の準備はいいかい?」
 SYUの言葉にうっとりしつつも飲み物を手に持つお客様達。
「tetsuくん、きみが乾杯のコールをやってくれ」
 SYUの指示によってtetsuがマイクを持つ。
「今日もみんなでお店を盛り上げていきましょう、乾杯!」
 先代オーナーが考え出した小さなお店ならではのパフォーマンス。
 開店時から来店しているお客様にだけ与えられるこのパフォーマンス、この、全てのお客様を巻き込んでの乾杯によって一体感が生まれるのだ。
「みんな、楽しんでいってくれよ」
 SYUが最高のスマイルで締める。
 これだけでお客様はメロメロになってしまう。
 いったんホスト達は退場、そして彼らはこれから接客に入っていくのである。


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