ダメホストvs極悪ホスト(後編)
怒りを押さえきれなくなった勘九郎がtetsuにつかみかかろうとする。
「ダ…ダメだってば!…ぐ…」
慌てて止めに入った健一だったが110kgの体当たりを食らって弾き飛ばされてしまう。
「バカはすぐ暴力か」
110kgに胸ぐらをつかまれてもtetsuは涼しい顔。
勘九郎の怒りなどどこ吹く風。
そんな二人を見て健一は
「止められないや…」
と、慌ててオーナーを呼びに出て行った。
「うぉ〜!」
とうとう勘九郎が怒りにまかせて殴りかかった。
10年前、キックボクシングである程度の実績を作っていた勘九郎は殴り合いなら負けない自信があったのだ。
5分後、健一が唯我オーナーを連れてスタッフルームに戻ってきた。
特に激しい物音はしない。
「二人が和解してくれればいいけど…」
そう思っていた唯我オーナーだが、あまりの静けさにそれはありえないことを悟った。
そして、そのあまりの静けさにスタッフルームの中に入るのをためらっていたのだ。
意を決してドアに手をかけた瞬間に声が聞こえてくる。
「女が望むのは強い男だ、それは肉体的にも精神的にも、そしてSEXもだ。お前なんかに指名客がいたこと自体が間違ってるんだよ」
その言葉が吐き捨てられたと同時にドアが開く。
「お客様がお待ちですので失礼します」
不敵な笑みを浮かべて通り過ぎるtetsu。
唯我オーナーはtetsuにかける言葉が見つからなかった。
勘九郎は元キックボクサーだがtetsuは総合格闘家、そして現在もジムに通ってトレーニングを欠かさない事を知っていたのだ。
「くそっ…」
勘九郎の攻撃を見切り鮮やかなハイキックでKO、これが健一が唯我オーナーを呼びに行っている短い間に起こった出来事だった。
「大丈夫か…?」
うずくまっている勘九郎に駆け寄る健一。
「俺たちはどうしたらいいんだ…?何一つあの人に勝てないのか…」
悔しさ、怒り、情けなさ…
勘九郎の言葉からいろいろなものが感じられる。
「色恋に持ち込まれたら俺たちに勝ち目はないよ…」
健一は諦めたようにつぶやく。
「勘九郎、健一、あなたたちはまだ指名は取れないかもしれない。でもね、指名を取るだけが全てじゃないはずよ。あなたたちがお店を全体を盛り上げていけばお店はどんどん活気づく。そうすればお客様も増えるはず。あなたたちにもできることはあるはずよ」
落ち込んでいる二人を元気づけるように唯我オーナーが提案する。
「そうか…俺たちにも出来る事…、わかりました、俺たちやってみます。よっしゃ〜、健一!やるぞ〜!!」
立ち直りの早いのが勘九郎のいいところ。
元気よく健一とともに店を飛び出して行った。
とりあえず丸く収まって一安心のワタクシでした。
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