第3話 ライバル店ホストクラブ「アルバトロス」登場!
先ほどの事件から30分後、勘九郎と健一が袋を抱えて戻ってきた。
ワタクシにあるCDを渡して、
「今から5分後にアナウンスと音楽をお願いします」
と、言い残して二人はスタッフルームへと消える。
何のことやらわからないワタクシは近くにいた唯我オーナーと目配せ。
好きにやらせなさいとのことなので勘九郎に言われたとおりに始める事に。
「ただいまよりショータイムを行ないます」
アナウンスとともにフロアの照明が落とされる。
NIGHT OF FIREが響き渡り店内中の派手な照明がつけられる。
小力の格好の勘九郎とHGの格好の健一が二人でパラパラを踊りだした。
呆気に取られるSYUとtetsu、笑顔で見つめる健二とSHURA。
そして、どうみても笑いをこらえている唯我オーナー…
あなたが煽った結果なのに…と、少々呆れてしまったワタクシだったが、なんと、お客様たちは一緒に手拍子をしてくれたりと喜んでいる様子。
踊り終わったときには盛大な拍手。
満足そうな勘九郎と健一。
「やればできるじゃない、自分が指名を取る事よりもお店を盛り上げる、まずはそこから始めていけばいいのよ、それが基本よ」
笑顔で唯我オーナーが言った瞬間、ある席から声が上がった。
「そんなしょっぱいパラパラでお店を盛り上げたですって?笑わせてくれるわ。私たちアルバトロスと全然レベルが違いすぎてお話にならないわね。726、本当のパラパラを見せてあげなさい」
声の主は「スフィア」のライバル店「アルバトロス」のオーナー川田由美子。
彼女はなぜかいつもホストを引き連れて「スフィア」に来店してはいちゃもんをつけていく。
営業時間に他店で遊んでいるので店の営業がどうなっているのかは謎だが、それはここでは禁句になっているようだ。
726(なつる)と呼ばれたホストから不意にCDを渡され、早く音楽をかけろといわんばかりにフロアの中央でスタンバイ。
音楽が流れ、踊りだす726。
それは勘九郎&健一とは全くレベルの違うクラブ仕込みの本物のトラパラ。
726は元々クラブ通いをしていたのだが、若い男が必要と考えた川田オーナーによってアルバトロスにスカウトされていたのだ。
クラブで踊っていた726と付け焼刃の勘九郎&健一ではレベルの差は歴然。
さっきまで笑顔だった唯我オーナーの表情が曇る。
踊りが終わった瞬間の拍手も726の方が大きかった。
「どう?これが本当のパラパラよ。さっさとこんなお店たたんでしまいなさいよ」
勝ち誇った顔で詰め寄る川田オーナー。
「はいはい、これはあくまで店を盛り上げるためのサービス。こんなもので負けたからってうちの営業にはなんの関係もありません。お引取りください」
ベテランのSHURAが川田オーナーと726をつまみ出す。
「あんたなんかにスフィアは渡さないから」
と、唯我オーナー。
「これくらいで諦めないわ、うちにはまだまだ有能なホストがいるんだから!726、行くわよ」
と、捨て台詞を残して川田オーナーは退場。
「有能って、俺は…?」
726も後を追って帰っていった。
「唯我オーナー、あんなの相手しちゃダメですよ」
去っていく二人を見ながらSHURAが言う。
「そうね…でもさ、なんであの726ってホスト靴が左右違ったのかしら?」
「さぁ…?」
さっきのシリアスな闘いとは違って妙に笑える抗争でしたが、この抗争はまだまだ先まで続く事になるのだった。
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