第4話 癒し系ホスト健二ただいま修行中!

 

「癒し系って言われるのもいいんやけどな…いまいち指名に結びついてないような気がするんだよな。どうしたらいいんやろ…」
 健二がぼやく。
 当店最年少の健二は柔らかい笑顔で癒し系としてそれなりの指名を取っている。
 可愛いと言われ、そこそこの人気はある。
 しかし、SYU、tetsuの二人と比べるとまだまだ指名数は少なく二人のヘルプに回る事も多い。
 その現状に本人は悩んでいるようだ。
「俺はSYUさんのようになりたいんや…」
 と、そこに丁度お客様を外までお送りしたSYUが通りかかる。
「あ、SYUさん、どうすればSYUさんみたいなNO.1になれるんですか?」
 健二が思い切ってSYUに聞いてみる。
「そうだな…俺と一緒に来い。こんなことは初めてだが接客レッスンをしてやろう」
 SYUさんみたいな…と言われたSYUはまんざらでもないようで上機嫌で健二の指導をするようだ。
「失礼します、今日はこいつも一緒によろしいですか?うちの期待の若手の健二です」
 浴衣で来店されたお客様にSYUが健二を紹介する。
「はい、喜んで」
 SYUが現れるだけでその場の空気が変わる。
「じゃ、健二、君なりにお客様を楽しませてみてくれ」
「はい。どうも、こんばんは。暑いっすね〜。あ、はい、どうぞ。乾杯。今日はプレゼントがあるんっすよ」
 ポケットから取り出したのはチュッパチャプス。
 包み紙を剥がし、
「はい、あ〜ん」
 お客様も「あ〜ん」と口を開ける。
 しかし、健二の取った行動は自分がそれを食べてしまったのだ。
 苦笑いのお客様、頭を抱えるSYU…
「全然ダメじゃないか…接客のせの字も出来ていない…俺のやり方をよく見ているんだ」
 SYUは胸ポケットに挿した真っ赤な薔薇を取り出し、
「素敵なあなたには真っ赤な薔薇がよく似合う。さぁ、どうぞ」
 ポーズを決めてお客様に薔薇を渡す。
 お客様はこれでもうSYUの虜となる。
「今日の素晴らしい出会いに乾杯☆」
 決まった!SYUは自分に酔った。
「さすがSYUさん、NO.1は違いますねぇ」
 ホストの健二までもがSYUの接客術に感心している。
「ま、こんな感じだ」
「SYUさんすごいです、自分もSYUさんみたいになりたいです」
 健二は尊敬のまなざしでSYUを見ている。
「俺から盗んでみるんだな」
 なぜか健二にまでポーズを決めるSYU。
 健二の瞳が輝いている。
「俺に惚れるなよ」
 またもポーズを決めるSYU。
「はい、大丈夫です!」
 惚れたら困るだろ…と、ワタクシは思わず不安になってしまいます。
 一応、店内の規則には店内恋愛禁止とありますが、男の園なので必要はないはずなんですけどね… この接客指導は閉店まで続いた。
 憧れのSYUと一緒のテーブルにいられる緊張からか、グラスをひっくり返す、お客様の名前を覚えていないなど、いろいろやらかしてはいたが、持ち前の空気で全て許されてしまう。
 同じことを勘九郎と健一がやったら唯我オーナーが何度も出て来て謝罪する羽目になるだろう。
「なかなかやるようになったじゃないか、しかし、NO.1への道はまだまだ長いぞ」
 SYUはそういい残してスタッフルームへ。
「はい、ありがとうございます!NO.1目指して頑張ります!」
 今日の接客指導は健二にプラスになったようだ。
「健二、よく頑張ったわね。はい、これ」
 唯我オーナーが健二に何やら封筒を渡す。
「なんやろ…」
 健二が期待に胸をふくらませて封筒を開く。
「今日はご苦労様、また明日からよろしくね♪…ってこれだけか〜!」
 封筒を握ったまま上げた健二の叫び声が響き渡って本日の営業は終了となりました。


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