第10話 勘九郎先生の熱血指導

 

 本日一番に出勤してきたのは勘九郎&健一の売れないホストコンビ。
 この二人にも同伴ってものがあればいいのだが…
「よし、今日も仕事頑張るぞ〜、で、なんか今日は誰か来るって言ってたよな?」
 と、勘九郎。
「面接の人じゃなかったっけ?」
 答える健一、なんだか曖昧な返事だ。
「あ、そうだ。それだ」
 元気な相槌を打つ勘九郎だが、この男もあまり深く考えていないようだ。
 本当に大丈夫なんだろうか…
 気合いをいれて掃除を始める二人。
「こんにちは…」
 と、1人の男が入ってきた。
「お、来たか。面接に来たんだろ?早くこっち来いよ。これからこの店で一番大切なことを教えるからしっかり聞くように。いきなり指名が取れると思うな。まず大事なことは店を盛り上げることだ」
 自信満々に指導(?)を始める勘九郎。
 面接を受ける前に指導も何もないと思うがそれよりも確認した方が…
「ほうほう、店を盛り上げることが大事…」
 その男もなぜかしっかり勘九郎の話を聞いている。
「そうそう、新人の基本はそこからだ」
 すっかり先輩気取りの勘九郎。
 調子に乗ってさらに続ける。
「で、うちではショータイムがあるから、その大事なショータイムの踊りを伝授する。きみ、名前は?」

「斗猛矢と申します」
「斗猛矢か、俺の指導は厳しいぞ」
 そしてパラパラの指導が始まった。
 短い踊りなのにも関わらず30分以上も指導していたでしょうか?
「よし、このへんで大丈夫だろう」
 斗猛矢の肩に手を置いて、本当に先輩のような態度の勘九郎。
 慎重なはずの健一までもが
「あんまり上手くないな…とりあえず腰を振る練習でもする?こうやるんだよ、暑いけど寒いフォー!」
 と、この調子だ。
「ま、初めてにしては上出来の方じゃないか?よし、早速だけど今日から一緒に踊ってもらうから。みんなには内緒でサプライズを仕掛けよう。一流になる人間はそういうところからが大事だ!」
 どこまで偉そうなんだか…
 斗猛矢に隠れる場所を指示していつもどおりの入場などを終了、そしてショータイムとなった。
「ただいまよりショータイムです!」
 ワタクシのコールとともに音楽、そして勘九郎&健一&斗猛矢の3人が登場していつものやつを踊る。
 SYU、SHURA、唯我オーナーの3人は呆気に取られている。
 お客様は大喜び。
 そして踊りが終了。 
 満足気な表情の健一が
「まぁまぁじゃないか」
 と、肩に手を置く。
「まだまだだけど練習すればよくなるだろう」
 と、勘九郎が完全な上から目線で言った。
「あざ〜す!」
 と、斗猛矢。
 その声と同時に
「おまえら何やってるんだ!」
 呆気に取られていたSHURAが我に返って叫んだ。
「斗猛矢さん、お疲れ様です。何でこいつらと一緒になって踊ってるんですか!?」
 SYUが言う。 
「二人とも元気そうで何よりだ」
 と、斗猛矢。
 わけがわからなくなっている勘九郎&健一。
「はい、ありがとうございます!斗猛矢さんもお元気そうで…」
 NO.1のSYUが完全に敬語で話している様子に驚く二人。
「SYUさん、何で敬語なんですか?こいつ面接に来たんじゃ…?」
 恐る恐る聞く勘九郎。
「バカ野郎!この人は3年前にうちのNO.1だった斗猛矢だ」
 と、言いながら勘九郎に蹴りを入れるSHURA。
「今は独立して北海道でお店を経営してらっしゃる。今日は斗猛矢さんが来るって言っておいただろ!」
 SYUも勘九郎に蹴りを入れながら言った。
「面接の人が来るって…」
 と、健一。
「それは明日だ!」
 SYUが突っ込む。
「ええ!申し訳ありませんでした〜」
 勘九郎&健一は驚いて土下座で謝る。
 その様子を見ていたお客様達は大爆笑。
 今日は元NO.1の斗猛矢も加わりサプライズな1日として営業をすることができたのでした。
 営業終了後にこのダメホストコンビがみんなからもの凄く怒られたのは言うまでもありません…


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